読書感想文

新刊、休刊、文学、専門書。
あらゆるジャンルの書籍について読書感想を書いていきます。
得意分野: IT関連技術書、ミステリー小説、ベースボール


2007/10/29

日本カジノ戦略

著者はラスベガスのディーラースクールを卒業し、ネバダ州立大学大学院でカジノ経営学を学んだラスベガスカジノの専門家。

石原都知事が東京カジノ構想を発言してからラスベガス好きの私はいつカジノが東京にできるのか期待したいたのだが、最近はそういった話題が全然あがらない。日本でカジノは無理なのか.... と半分あきらめていたのだが、この本を読んで、実は着実に日本でのカジノ解禁に向かって進んでいることを知った。

2006年に自民党が 我が国におけるカジノ・エンターテイメント導入に向けての基本方針という方針案をWebで公開している。かなり議論しているようで、まずは2,3箇所カジノを開設し、その後10か所程度まで広げようということが記載されている。
本書によると羽田空港の国際化を2010年秋よりも前倒しし、外国からの客を受け入れられる態勢を進めているようだ。そもそも政府としては、外国からの観光客誘致、財政拡充、雇用拡大を狙ってのカジノなので、当然の動きであろう。

本書ではお台場にカジノを設置し、どのような体制・設備を整えて行けばよいかを記述している。おそらくかなりの知識を持っているのであろうが、提案としてはオーソドックス、言い方を変えれば当たり前のことを書いてあるため若干残念であった。

私は「大人のワンダーランド」ラスベガスに魅せられ、何度もラスベガスを訪れている。魅力的なカジノを東京に作るということであれば、1軒や2軒のホテルだけでなく、最低でも10軒以上の巨大ホテルをラスベガスのストリップのように集中させることが条件であると考える。各ホテルが個性をもたせ、中流層、上流層、家族連れなどに対応させるのだ。そして、ラスベガスのフォーラムショップスのように、カジノのすぐ近くに大規模ショッピングセンターを併設する。カジノで儲ければその金で買い物をするし、どうせ負けるぐらいなら賭けずに買い物をしようという発想になる人もいるからだ。
本書ではコンプの利用についても書かれているが、私もコンプには賛成だ。
ただ、カジノ後進国の日本が普通にカジノをやってもカジノ先進国に勝てるかわからないので、より思い切ったコンプが必要であろう。
たとえば、日本でカジノを合法化するにあたり、実際にカジノライセンスを与える企業にはインターネットでのカジノ(オンラインカジノ)も許可する。そうすることによってリアル(カジノホテル)での営業に加え、バーチャル(インターネット)でも収益が上がる。ここでネットでの利用をコンプの対象にすることにより、ネットでポイントを貯めた客がカジノホテルに無料宿泊できるようにすることにより、客の購買意欲を向上させ、リアルとバーチャルの相乗効果が生まれる。

本書は日本でのカジノ合法化および運営に興味のある人にお薦めの1冊である。

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2007/10/20

不動心

著者はニューヨークヤンキースの松井秀喜選手。
文体からしておそらくインタービューした内容を編集者の人が文章にしたのではないかと思われる。
左手首を骨折した2006年シーズン終了後に書かれている。

松井選手といえばマスコミに対して誠実に対応することで有名であるが、私が一番驚いた彼のコメントはまだプロ入りする前、ドラフト1位で巨人に指名されたときのコメントだ。
当時彼は星稜高校の主砲であったが、夏の甲子園2回戦で5打席連続敬遠されチームは敗退。星稜の山下監督は「優勝を狙えるチームだったのにあんなやり方は....」と言っていた。おそらく松井選手も不本意な形で負けて相当悔しかったであろう。だが彼は、あの敬遠があったからこそ注目されドラフト1位で入団でき高額な契約金ももらえるのだと発言していたのだ。こういう発想の仕方をできるなんてすごいなぁと思っていた。
今回この本を読んでみて、「人間万事塞翁が馬」という言葉で5打席連続敬遠のことに触れていた。なるほど、だからプラス思考でああいうコメントがでてきたのか。

また、「努力できることが才能である」という言葉を小さいころに父からおくられ、その言葉を胸に頑張ってきたというエピソードがあった。とてもよい言葉だと思う。

マスコミが書く記事のようにコントロールできないものは気にせずに、自分でコントロールできることに集中して結果を残そうという姿勢も素晴らしいと感じた。

マスコミに対する対応やチームプレーに徹するか個人の成績が重要だと考えるか、イチロー選手と比較すると正反対の部分も多い。ただ間違いなく現在の日本人MLB野手では最高の2人である。

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2007/10/14

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来

タイトルを見ると新卒入社する20代前半の若者を分析した内容なのかと思っていたのだが、それだけでなく30代のサラリーマンに対する分析もあった。私は30代であるが、会社に対してなんとなく感じていた閉そく感、失望感のようなもの(具体的にはうまく表現できないのだが)を、本書で実に明確に表現していたことに感心した。霧が晴れるような気持ちになった。と同時にやっぱりこのまま過ごしていても将来は明るくないと感じさせられた。

著者は「年功序列」制度が立ち行かなくなったことが20代の離職、30代の失望感に大きく影響しているという。日本的企業の場合、以前は「入社」してしまえばレールが敷かれており、あとは時間が立てば出世する仕組みであった。しかし、年功序列が機能するのは会社が右肩あがりに成長する時代の話であり、規制緩和、グローバル化の波にのまれた現在ではもう機能しない。したがって企業は「能力主義」を取り入れるが、その仕組みを考えるのは「昭和的価値観」をもった年寄りのお偉方。どうしても保身が入り中途半端な能力主義制度にしかならない。結果、暗黙の年功序列制度の上に人件費カットを目的とした中途半端な能力主義となる。すでに40代、50代にはポスト待ちの人々があふれており、20代、30代の若者にとってはこの先のレールすら保障されない状態となり、我慢して下働きしても将来恩恵を受ける可能性は極めて低い。

確かにこの分析は当たっている。私の感じていた閉塞感は2つ。1つは30を過ぎてもまだ組織の中で年下の年代がほとんど増えていない。したがって下働きさせられることになるのだが、上の年代(一般社員)は口で偉そうなことを言うが手は動かさない。給料が高い割にパフォーマンスが非常に悪く、人の給料のために自分が働かされているような気分を味わっていた。2つ目は、自分の10年後をイメージするのに格好の存在であるはずの職場の10歳程度上の人たち。仕事面、生活面を見ていてその人たちのようになりたいと思わないのだ.... 
結局今のまま働いていてもハッピーにならないのではという失望感がある。かといって転職するにしても、昭和的価値観をもつ企業では同じことであり、行くとすれば外資系もしくはベンチャー。その場合、一時的には成功といえる転職ができるかもしれないが長い目で見た場合の安定感には欠けるように感じる。
結局のところ自分も無意識のうちに昭和的価値観に染められており、いまだ年功序列のレールがつながっているような気がしているのだろう。さながらタイタニック号のような巨大客船であれば沈没することはないだろうといった感覚か...
だからなんとなくこのままではいけないと思いつつもハイリスクハイリターンの道に踏み出せないのだろう。おそらく10年後にははっきりといているのだろうが...

著者は東大法学部を卒業後大企業の人事部門に勤務するといういわゆるエリートコースを歩いてきた人間だ。彼の作品はほかにも読んだことがあるが、すごく文章表現がわかりやすい。しかも問題の本質を論理的に説明し、その解決策まで提案する。まだ30代前半ということもあり若者の視点から社会をみることができ、若者代表といった感じだ。
現在の生活に疑問を感じている若者にぜひとも読んでもらいたい良書である。

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