日本交通の3代目若社長が実際にタクシードライバーとして働いた1か月間のドキュメント。
私は普段タクシーに乗ることはあまりないので、表面には見えないタクシードライバーの仕事というものがわかって面白かった。と同時に、自ら体を張って現場を経験する社長に感動した。
この社長は37歳で、経歴が 慶応 -> ノースウェスタン大学MBA -> マッキンゼー日本支社 と私から見れば超エリート。そしてその後家業の日本交通に入社して34歳で社長に就任。
そういうわけでタクシードライバーの経験なしで社長になってしまったためであろう、現場を学びたいということで1ヶ月間タクシードライバーとして働くことに決めて実際に実行した。
1回の乗車で22時間ぐらい働く関係で1か月といえど実際には13回の乗車であるが、それでも一般のタクシードライバー同様に長時間勤務をやり遂げたことは称賛に値する。
社長は社長業に専念しろ、パフォーマンスはやめろといった意見もあったようであるが、私の感覚では現場を理解するための行動をとる社長は偉い。
タクシードライバーにしてみれば、現場を知らず絵に描いた餅のような戦略をいう社長のいうことはあまり信用できないだろうが、体を張って実際に現場を理解しようとする社長の言うことは聞く気になるだろう。
社長は次のように書いている。
次の30年を見据え、3代目の自分に、いま一番必要なものはなにか?日本交通ではGPSシステムを導入していて、ドライバーにとって非常に便利であることが書かれているのだが、特に驚いたのが次。
それはおそらく、現場感覚。ハンドルを握った最前線での経験だろう。MBAやマッキンゼーで学んだ机上の論理も重要だとは思う。しかし、そうした高度1万メートルでの空中線が活きるのは、あくまでも地上戦を知ってこそ。
創業者である祖父の川鍋秋蔵は、お抱え運転手として10年間自分でハンドルを握った。初代を100とすると、いまの自分の現場感覚は1くらいである。でも、1か月集中して乗れば、10くらいにはなるのではないか?そしてその経験は、社長としての1か月よりも、多くのことを教えてくれるのではないだろうか?
お断りしてから一時停止すると、お客様が後ろからニュッと1枚のカードを差し出した。GPSコードだ!ウチのタクシーの領収書には、降りた場所のGPSコードが印字されるようになっている。次回、運転手がGPSコードを入力すると、自動で行き先がナビにセットされるという優れものだ。領収書にGPSコードを印字して、次回以降はそれをみせればよいというのはドライバー、客双方にとってとても便利なシステムだ。ここまでシステムが進んでいたのか!
本書は、経営者に読んでもらいたい本である。と同時に、今年読んだドキュメンタリー本の中でもトップクラスの面白さであるので、娯楽本として一般の人にも気軽に読んでみてもらいたい本である。
本当にお薦めの1冊である。

0 Comments:
コメントを投稿
Home