野村監督の本を初めて読んだ。
私の中では野村氏といえばヤクルト監督時代のID野球のイメージが強い。キャッチャー出身ということもあり緻密な分析をできる人だとは思っていたが、単にデータ分析にとどまらず、人間育成という観点からも選手を育成しているところがすごい。
こうした3つのテーマから生じる打者のタイプを、私はA、B、C、Dと4つにわけた。
A型= 直球に重点を置きながら、変化球にも対応しようとする。
B型= 内角か外角、打つコースを決める。
C型= 右翼方向か左翼方向か、打つ方向を決める。
D型= 球種にヤマを張る(このタイプは根拠を見つける努力をするとよい)。
このあたりは捕手としての視点であろう。確かにこういうことを考えながら野球を見ると新たな発見がありそうだ。
タイトルというと、私の持論に「3年で獲れなければ、幸運がないかぎりタイトルは獲れない」というものがある。これは意外だったが、結構あたっている気がする。古田選手のように1年目は2割5分しか打てなくても翌年には首位打者をとってしまうようケースのように、最初の3年で真剣に取り組んで飛躍できるかどうかがカギといったところなのだろう。
補足すれば、この3年というのはレギュラーになって3年ということだ。もちろん、なかには野茂や上原や松坂のように新人の年にタイトルを獲る者もいるが、王やイチロー、松井、落合らタイトルの常連となり、当たり前のようにタイトルを獲るような選手はみな、この「レギュラーに定着して3年以内」の法則に当てはまる。
「野村くんと星野くんには決定的な違いがある。野村くんは詰めが甘いよ」そうだったのか。18年ぶりの阪神優勝には星野監督の積極的な行動の賜物だったのか。
私は「4番を獲ってくれ」「エースを獲ってくれ」というだけで、実際に誰を獲ってほしいのかもいわなければ、FA交渉に積極的に乗り出して選手を口説いたり、長嶋監督のように選手の家の前まで出向いて口説き落とすことなどしなかった。いや、できなかった。
オーナーに「今の制度下でチームを強化するにはお金がいるんですよ」といいながら、「いくら出してほしい」「そのためには何億円いります」などといったことがない。
外国人もせいぜいビデオを見るぐらいで、阪神監督の1年目などは、なぜなのかいまだに理由がわからないが、当時の球団社長や編成部長は獲得候補選手の名前さえ教えてくれなかった。私が知ることで何か不都合でもあるのか不満に思ったが、それでも監督権限で無理やり話させるようなことはしなかった。そういったことは監督の仕事ではなく、フロントの仕事だと思っていたのだ。
だが、星野監督は違う。金本をみずから口説き、そしてフロントに伊良部を獲らせ、自身のもつパイプでトレイ・ムーアら外国人を獲得し、さらにコーチ、選手などチームの3分の1近くを入れ替えた。私が指揮を執っていた阪神とはまったく別ものといってもいい阪神タイガースをつくりあげた。
まぁ野村監督にしてみれば越権行為という気持ちもあり遠慮していたのだろうが、星野監督にしてみれば結果はすべて自分の責任になるのだから越権行為といわれようがやりたいようにやるといった気持なのだろう。
相手に動いてもらいたいときに、単に抽象的な要望をするだけでなくもっと具体的なところまで伝えるというのは実社会でも使えることなので参考になる。
在任期間中に逆指名を取り付けた鳥谷を含めれば、3年連続してドラフト戦略に成功した星野前監督と社会人選手をドラフトの下位指名した程度に終わった私は一見対照的かもしれないが、共通点もある。それは両者とも即戦力、つまり大学や社会人選手中心のドラフトを優先するということだ。ドラフトで将来性のある選手よりも即戦力を好むという点はMLBオークランドアスレチックスのマネーボールと同じ考え方だ。またマネーボールではデータを重視しており野村監督のID野球と通じる点がある。
野村再生工場といわれ全盛期を過ぎた選手を起用することもマネーボールと通じる点がある。
野村監督の考え方とマネーボールの考え方には、同様の背景があるように思われる。つまり、潤沢な資金がないためにスター選手をそろえられないといったチーム事情が背景にあり、その場合にどうやって勝つかということを突き詰めていった上での理論なのではないかと思うのだ。
その他、野村監督は人間形成、組織運営といったことについて非常に深く考えていることが伝わってきた。おそらく野球界でけでなく、ビジネス界に進んでいても成功していただろうなぁと思った。
想像以上に野村監督の考えが深かったので、他の著書についても読んでみたいと思う。

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