読書感想文

新刊、休刊、文学、専門書。
あらゆるジャンルの書籍について読書感想を書いていきます。
得意分野: IT関連技術書、ミステリー小説、ベースボール


2008/07/27

タクシー王子、東京を往く

日本交通の3代目若社長が実際にタクシードライバーとして働いた1か月間のドキュメント。
私は普段タクシーに乗ることはあまりないので、表面には見えないタクシードライバーの仕事というものがわかって面白かった。と同時に、自ら体を張って現場を経験する社長に感動した。

この社長は37歳で、経歴が 慶応 -> ノースウェスタン大学MBA -> マッキンゼー日本支社 と私から見れば超エリート。そしてその後家業の日本交通に入社して34歳で社長に就任。
そういうわけでタクシードライバーの経験なしで社長になってしまったためであろう、現場を学びたいということで1ヶ月間タクシードライバーとして働くことに決めて実際に実行した。
1回の乗車で22時間ぐらい働く関係で1か月といえど実際には13回の乗車であるが、それでも一般のタクシードライバー同様に長時間勤務をやり遂げたことは称賛に値する。

社長は社長業に専念しろ、パフォーマンスはやめろといった意見もあったようであるが、私の感覚では現場を理解するための行動をとる社長は偉い。
タクシードライバーにしてみれば、現場を知らず絵に描いた餅のような戦略をいう社長のいうことはあまり信用できないだろうが、体を張って実際に現場を理解しようとする社長の言うことは聞く気になるだろう。
社長は次のように書いている。

次の30年を見据え、3代目の自分に、いま一番必要なものはなにか?
それはおそらく、現場感覚。ハンドルを握った最前線での経験だろう。MBAやマッキンゼーで学んだ机上の論理も重要だとは思う。しかし、そうした高度1万メートルでの空中線が活きるのは、あくまでも地上戦を知ってこそ。
創業者である祖父の川鍋秋蔵は、お抱え運転手として10年間自分でハンドルを握った。初代を100とすると、いまの自分の現場感覚は1くらいである。でも、1か月集中して乗れば、10くらいにはなるのではないか?そしてその経験は、社長としての1か月よりも、多くのことを教えてくれるのではないだろうか?

日本交通ではGPSシステムを導入していて、ドライバーにとって非常に便利であることが書かれているのだが、特に驚いたのが次。

お断りしてから一時停止すると、お客様が後ろからニュッと1枚のカードを差し出した。GPSコードだ!ウチのタクシーの領収書には、降りた場所のGPSコードが印字されるようになっている。次回、運転手がGPSコードを入力すると、自動で行き先がナビにセットされるという優れものだ。
領収書にGPSコードを印字して、次回以降はそれをみせればよいというのはドライバー、客双方にとってとても便利なシステムだ。ここまでシステムが進んでいたのか!

本書は、経営者に読んでもらいたい本である。と同時に、今年読んだドキュメンタリー本の中でもトップクラスの面白さであるので、娯楽本として一般の人にも気軽に読んでみてもらいたい本である。
本当にお薦めの1冊である。

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2008/07/25

Google誕生

Google創業者のラリーページとサーゲイブリン。
2人の幼少時代からスタンフォードでの出会い、そしてGoogleの創業から大躍進までをたどるドキュメンタリー。

2人がものすごく頭が良いというのは知っていたのだが、単に一流のエンジニアであるだけではなく、経営能力にも優れていることを本書で知った。

社員が数十人の頃から専属コックを雇って社員に無料で食事を提供したいと考える経営者はなかなかいないだろう。単に福利厚生の充実だけではなく、そうすることにより食事のために外出して時間をつぶさなくてもすむし、社員間のコミュニケーションも充実する。つまり会社にとって必ずプラスになると計算をしておこなっているあたりがすごい。

20%ルールにしても斬新な発想だ。20%の時間を自分のやりたいことをやることによって自発的にアイデアを具現化していくことは社員のモチベーション向上につながるし、新規プロジェクトの立ち上げにも非常に有効だ。こういうルールのある会社で私も働きたい。日本の会社であれば、アイデアを出してもあっさりつぶされてやりたいことをやれないということがよくある。そうではなく20%の時間でアイデアをより具体化した上で評価してもらえるのだ。

ニューニューシングもそうだったが、シリコンバレーでのベンチャーというのは非常にわくわくするし憧れる。まぁこのような成功例の何十倍何百倍も失敗したケースはあるのだろうが。

本書にはGmailのプライバシー騒動やクリック詐欺に対する対応など、今まで私の知らなかったことも書かれており非常に興味深かった。

わずか数年で世界を制した企業Googleを知るのに本書は非常に役に立つ。
Googleに興味を持っている人だけでなく、IT業界で働いている人や経営者にも読んでもらいたい1冊。

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2008/07/18

グーグルに勝つ広告モデル

テレビ・新聞・雑誌・ラジオの4大マスメディアとグーグルに代表されるインターネットを比較し、既存のマスメディアの生き残り戦略を書いている。

統計を基に分析しており、ある程度うなずける内容が多かった。まぁ、これをすればグーグルに確実に勝てるという方法は明確にはかいていなかったが..

グーグルとヤフーの違いとして、ヤフーはトップページにいろいろコンテンツを乗せて「認知(アテンション)」させることが目的なのに対して、グーグルはトップページは簡素にし、検索結果で広告を載せる「能動的な興味(インタレスト)」を引き出しているという記述がある。トップページの比較は何度も聞いたことがあるが、認知と興味という分析を聞いたのは初めてだったので新鮮な感じがした。

ここまで、ネットと新聞の比較を軸足に、将来の方向性仮説について述べてきましたが、筆者自身は、物理的な紙の新聞を各家庭に届ける宅配ネットワークという仕組みこそ、新聞社が保有するネットメディアに対する中核的な競争能力の礎ではないかと考えています。
この部分に関しては同意する。インターネットが普及してネットショップでの購入が増えているのだから、新聞配達ネットワークを有効活用するというのは非常に有効であろう。

「LEON」は「年収2000万円以上で、月に30~50万円程度の自由になる小遣いのある30~40代男性」というターゲット設定をしていますが、図15に見られるように、30~40代で年収2000万円以上という人は、構成比としては0.1%程度にしか日本にいません。
普通にビジネスプランとしてこの企画を考えると、「あまりにターゲットが狭い」ということになるのですが、ここがミソで、年収2000万円以上がターゲット、と公言することによって、年収数百万円~1200万円くらいの一般層を、読者として取り込んでいるわけです。

このことは知らなかった。LEONを購入したことはないのだが、確かになんとなく上級のライフスタイルのイメージがあり、憧れみたいなものはあるなぁ。うまくターゲットをずらしているなぁ。

ウィキペディアは、グーテンベルクからグーグルが登場するまでの「旧世界」がずっと発展させてきたこの「知のバリューチェーン」から、無料で情報という栄養をもらってコンテンツを拡充するという寄生虫のような構造で肥大化しています。
ここで問題になるのは、ウィキペディアがフリーであるがゆえに、強大な普及力を有しているという点です。そのため「知のバリューチェーン」を循環する経済価値が減少し、ウィキペディアが循環的に依存していた「信用できる」情報源が、事業運営上の深刻な困難を迎える可能性があるのです。そうなると、ウィキペディア自体も中長期的には生きながらえることはないでしょう。ここに大きなジレンマがあります。
この部分については賛同できない。BBCやニューヨークタイムズのような「信用できる」情報源と、ウィキペディアはすみわけができている。少なくとも私は使い分けをしている。

例えば何か事件が起こったとき、速報的にその情報を仕入れるのは新聞社など「信用できる」情報源からである。事件直後ではウィキペディアには網羅的に情報がまとまっていることを期待していないのでウィキペディアでにはアクセスしない。
逆に、昔あった事柄について知りたい場合には、ニュースサイトではなくウィキペディアを利用する。網羅的にまとめられているからだ。

ということで、私は新聞社など「信用できる」情報源と、ウィキペディアはともに生きながらえていくと考えている。

本書はマスメディアの現状と今後の広告モデルについてわかりやすく分析している良書である。特にマスメディアには直接ビジネスでかかわっていない人に薦めたい1冊。

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2008/07/15

ラクをしないと成果は出ない

著者は日垣隆氏。私はどういう人だか知らなかったのだが、公式Webの自己紹介はこちら

本書には著者の思う仕事の鉄則が100個書かれている。見開き2ページに1つの内容が書かれており、2ページめの最後にはポイントとして1行で簡潔に内容がまとまっている。1つ1つ独立した内容なので、細切れの時間に読んでいくことも可能。このあたりに著者の工夫がみられる。

仕事の内容や周りの環境などにより仕事の鉄則は違うので、すべての項目に共感できるわけではないが、誰でもいくつかは共感できる項目があるのではないかと思う。

ちなみに私が共感できたのは次の項目。

  • よくわからなかったら、現場に行って考える
  • ウソには必ず理由や背景がある。それを探るとインプットが効率的になる。
  • 人から薦められたものは、無理をしてでも即日取り入れる
  • 「なるほど」と思ったことは、24時間以内に「やる」メドをつける

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2008/07/09

35歳までに年収2000万円になる

人材ソリューション企業「レイス」でスカウト事業を手がけている著者が語る転職論。

現状に満足せずに、ステップアップ転職をすれば年収もあがるという内容。
著者は転職を支援するのが仕事なので、100パーセント鵜呑みにはできない。ただ結構もっともだと思われることが書かれている。特に次の部分。

「知名度の低い会社から、一部上場の有名企業に移籍した」
「斜陽産業の古い会社から、勢いのあるIT業界に転職した」
というと、なんとなくステップアップしたように聞こえますが、仕事の内容や役割が変わらないのであれば、ただキャリアをスライドさせただけ。転職の回数が無駄に増えただけで、意味のある転職だとは思えません。

ステップアップという意味では、会社の規模ではなく自分の役割や裁量権がアップするような転職を意識する必要があるだろう。例えば30代になればマネジメント経験も求められてくるので、今の会社でマネジメント経験を積める環境がないのならば別の会社で経験を積んだ方が長い目でみるとプラスになる。

本書では、大手企業の社員ほど30代で成長しにくいと説明している。マニュアル化や細分化がその原因として挙げられている。
大手企業で働いていて、仕事のスピードの遅さに嘆いている人、全体でなく一部にしか携われないと嘆いている人、上の世代が詰まっていてマネジメント経験を積めそうにない人は、ベンチャーに転職したほうがよいかもしれない。

一般的には中小企業よりも大企業の方が給料が高いが、中小企業で儲かっているところの上級幹部になれば、大企業の平社員でいるよりも給料が高いケースがあるようだ。本書では何件かその例を紹介している。

まぁまずは自分のキャリアプランを描くことが1番。何をしたいのか、どうなりたいのか考えた上で、現状の仕事を続ければよいのか転職したほうがよいのかを考える。

採用する側も人を選ぶわけで、今の会社が嫌だから転職したいという後ろ向きな気持の人は取りたくないだろう。自分が転職すればどのような貢献ができるか十分に考えて説明する必要がある。

今は昔と違い転職がありきたりの時代になったので、長い目で見てプラスになると思えば転職するのはありだろう。

本書は、今の仕事や会社に満足していない人にお薦めの1冊。

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2008/07/06

統計でウソをつく法

サブタイトルは「数式を使わない統計学入門」。

以前から統計は鵜呑みにできないと思っていたのだが、この本を読んでやっぱりそうかと思った。

統計に関するごまかしは何パターンかある。

1.データの取得方法
偏りなく多数のデータを取得しているか。
例えば国民の所得に関する統計をとる場合、インターネット限定で調査をすればインターネットを利用していない層のデータが取得できず偏りが生じる。
また、わずか数人分のデータしか取得していない場合は、対象が少なすぎてデータとしての正確性に欠ける。
利害関係が絡む場合には、何度も統計を取った上で自分に都合のよいデータのみを採用するケースがある。
また、質問の内容によっては、回答する人が勘違いして間違った情報を提供する可能性もある。

2.結果の見せ方
結果をグラフ化して見せる場合、グラフの描き方によって印象が大きく変わる。たとえばある事象に関して、1年の間に値が10000から10100に変動した場合を考える。グラフの縦軸を0から10010にするとほとんど増加していないように見える。しかし、グラフの縦軸を10000から10100にすると極端に増加しているように見える。
また、たとえば人の平均身長が10年前に160cmだったのが現在は170cmであるとする。この場合に2人の人の絵を描いて、高さの比率を16:17にするグラフを見かけることがある。しかし人の絵は2次元で書かれており、実際には16×16:17×17に見え、実際の身長以上の差を見せる結果になる。もしも絵を3次元ぽく描いている場合には、3乗の差があるように錯覚を引き起こす。

3.結果分析
サンプルは正しくても、結果の分析を間違えることがある。
例えば喫煙の有無と学校の成績に関する統計を取る場合を考える。仮に喫煙する生徒ほど学校の成績が悪いといった結果が出てきた場合、これにより喫煙すると頭が悪くなると結論づけるのは間違いである。なぜなら相関関係があるといっても因果関係ははっきりしないからだ。喫煙したから頭が悪くなったのではなく、頭が悪いから喫煙をしたのではないかという仮説も考えられる。
したがって、因果関係まで勝手に特定することは間違いである。

本書は特に難しい数式を使うことなく説明されているので、文系の人にもお薦めの1冊である。

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2008/07/04

エスキモーに氷を売る

サブタイトルは「魅力のない商品を、いかにセールスするか」。

著者はNBAのチームでマーケティングを行い、不人気チームの観客数を大幅に増加させたJon Spoelstra。スポーツマーケティングを中心に、どのようなマーケティング手法で売上を増加していくかについて書かれている。
ちなみに、タイトルは「エスキモーに氷を売る」だが、本文中ではエスキモーの話はでてこない。

著者のすごいところは、価値のないと思われる商品に、いかに価値をつけていくかの考え方である。
例えば弱小バスケットボールチームの場合、資金力に乏しく、試合に勝てず、そしてスター選手もいないといった状態で観客席はがらがらで満員になることはシーズンに1度もなかった。
しかし著者は考えを巡らせ、スター選手の所属するチームに価値を見出した。そして人気のあるチームとの対戦試合を数チーム分パックにして売り出したところ、それらの試合は満席になったという。
普通は自分のチームの選手をアピールして来場を呼び掛けそうなものだが、相手チームのスター選手に寄り掛かるという発想が面白い。

また、試合前に著名人の講演会をスタジアムで行い、法人顧客を増やすという案も成功したそうだ。下手に値引きをするよりも、定価のままで付加価値を加えるという考え。このあたりは著者の考えの根底にありそうだ。

人気のないものを多少値引きしてもやっぱり誰も買いたがらない。それよりもこの値段でここまでやるかというぐらい付加価値をつけるほうが人は買いたくなる。
ハワイの野球リーグの例がでているが、誰も書いたがらないチケットに、サインボールとリトルリーグのバットをつけて定価で販売したという。当然のように売上はあがるのだが、はたして赤字ではないかと疑問がわいた。しかし、グッズ売り場で売っているサインボールは7ドルでも、原価は2ドル。定価15ドルのバットも原価は3.5ドルと実は一般の人が感じるよりも金額の上積みは少ない。
一般人からみればこんなにいっぱいセットでこの値段でいいのか、これなら買いたいと思わせる一方で、実はそれほど費用の増加は多くない。そのため利益がだせるというからくりだ。

この本は、仕事でマーケティングをやっている人はもちろん、それ以外の職種の人にも読んでもらいたい1冊である。

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