読書感想文

新刊、休刊、文学、専門書。
あらゆるジャンルの書籍について読書感想を書いていきます。
得意分野: IT関連技術書、ミステリー小説、ベースボール


2008/08/30

株価予測黄金の方程式

現役の大学教授が書いた株式投資の方法。

私は株に関しては素人でほとんど知識がない。この手の本もほとんど読んだことがない。したがって他書との比較はできないが、この本は素晴らしかった。
何がすばらしいかというと、単に株価が上がるのか下がるのかを予想するのではなく、どこをどう分析してこういう結論になるかということを詳細に説明しているところがすばらしい。
この本を読めば、株に対する「分析の仕方」を学べる。
ちなみに、5銘柄の詳細分析をしているが予想はことごとくはずれている。執筆したのが2007年3月であったためサブプライムで大きく状況がかわったことが原因であろう。

この教授の方針は次になると思う。

自己資本比率とBPSが高い健全な会社で、かつPBRが低い(最低1.0以下)銘柄の13週移動平均線がマイナスからプラスに転じたタイミングで購入する。

今回知った用語
BPS: 一株純資産
PBR: 株価/BPS
EPS: 一株あたり純利益

以下は非常に参考になった株に対する考え方。
[AAA企業]
BPSが1500円以上、かつ自己資本比率が75%以上

「13週移動平均線の微分係数が-から+に転じるところが買い」
1. High PBR銘柄は、アンタッチャブル。
2. High PBR銘柄のPBRが1.0かそれ以上の時は、いくら安値だと思っても買わないこと。
3. その理由は、不意な業績悪化が発表されたら、株価は、それまでにないほど大幅な下げを演じ、PBRが0.5台~0.7台前半までうりたたかれることが多いから。
このように、EPSの値は、銘柄選別のための指標ではなく、買いと売りの株価を決定するための指標であると考えるのです。すなわち、「EPSの値が高いから、この銘柄を買う!」と考えるのではなく、銘柄選別は、あくまでも財務内容が健全である銘柄に絞り、それがPBRを基準にして割安になった時(PBRが0.5~0.9になった時)に買うと考えるのです。

個別ケース分析表に記載されている財務データと株価データの中でも、特にしっかりとにらむべき数字は
1. 「前期EPSの値->当期EPSの値->来期EPS予想値」の推移
2. 過去の安値と高値のPBRの値
3. 過去に安値と高値が付いた月とその周期

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2008/08/24

「残業ゼロ」の仕事力

残業を禁止して19期連続増収増益を記録したトリンプの元社長が語る仕事の仕方。

今年一番自分の価値観を揺さぶられた本!

自分の中では残業なんかせずに早く帰りたいという気持ちがあるが、かといって毎日定時に帰るのは気がひける。心のどこかで残業を美徳とする典型的な日本人なのだろう。
しかし著者は残業はしないものときめ、就業時間内に仕事を終えるよう仕事の効率化を説く。
海外で働いた経験のある著者によると、日本人の作業効率はかなり低いそうだ。海外では就業時間内に完了する仕事が日本では残業を必要とする。原因の1つには、日本人ははなから残業するつもりで仕事をしていることがあげられる。そうであれば、残業を禁止してしまえば就業時間内に必死に仕事を終えるのではないかという考えがあったそうだ。

経営者から見れば残業しない人はやる気のない社員に見えるのではないかと思っていた。
しかし著者の主張にあるように、残業するということは余分な人件費がかかることになるので、同じ作業量の仕事をするのであれば就業時間内に終えてくれるほうがうれしいという考え方もあるのか....

定時で帰れる社員にとっては、残業手当がもらえないということはあるが、夕方以降の時間を自由に使えるのであるから、趣味や家族サービスなどに時間をつかえてうれしいだろう。

すべての職種で残業なしでやっていけるかというと疑問な部分もあるが、基本的な考え方として仕事の効率を上げ、なるべく残業しないというのには大いに賛成する。
今後はもっと残業を減らしていきたいし、著者の言うように、仕事を「ゲーム」と割り切っていきたい。

以下は印象に残った箇所。

もっとよくなりたい、現実に満足せず、今より上を目指したいという目標や理想を持って働いているならば、問題というのはあって然るべきものなのです。

ところが、前提条件は共通なのに結論が一致しなかったり、会社にとって最良ではない解決策に全員の意見がまとまってしまったりするような、常識では考えられないことが、現実にはしばしば起こります。
これは、事実を積み上げ、データを分析し、論理的に詰めていく、というロジカルシンキングができていないからにほかなりません。ロジカルシンキングが苦手な日本人は、しばしば「好き」「嫌い」といった感情や情緒で問題解決に対処してしまうのです。

それでは、コミュニケーション不足を解消するにはどうしたらいいのでしょう。これはそれほど難しいことではありません。社員同士が顔を合わせ、話をする場や機会を会社が意図的に作ればいい。だからこそ、私は早朝会議を始めたのです。

まずは、「この人は仕事ができる」と思ったら、その人の一挙手一投足をとにかく観察します。辛抱強くそれを続けていると、やがて、その人がどこにどんな工夫をして仕事をしているのかが、見えてくるはずです。そうしたら、それを盗んで自分のものにする。これをしつこく繰り返すのです。

ところが、そんなことをするのは私ぐらいのもので、ほとんどの人はそのセンターテーブルには近づかず、部屋の隅で固まって、知った顔同士で談笑しながら料理を食べているのです。
自信がないとか、恥ずかしいとか、気後れするとか、でしゃばりと思われたくないとか、そういう気持もわからなくはありません。
でも、私のように「仕事はゲーム」と割り切っていれば、自意識のような邪魔なものは脇において、純粋に「ゲームに勝つためにとるべき最善の方法」をとることができると思うのです。
実際に独立するしないはともかく、いずれは独立するぞ、という志をもっている人と、定年までこのままつつがなくいければいい、という人とでは、成長のスピードがまるで違う、これが私の実感です。

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2008/08/07

インフォコモンズ

インフォコモンズ(情報共有圏)という聞きなれない言葉の概念がイメージしにくく、前半部分はあまり興味をひかれずに読んでいた。しかし、中盤から後半にかけて著者の主張が理解できてくると、この本のすごさが理解できた。

現在はWeb2.0と言われているが、本書ではWeb3.0の形を予言している。
すでにWeb3.0の息吹はいくつかのサイトに表れており、たとえばベイズ理論を用いたzero-zoneや食べログ、tsutaya discas、みんなの株式などが紹介されている。

ちなみに、本書で説明されているWeb*.0の定義は次の通り。

ウェブ1.0は集中化した彼ら。
ウェブ2.0は分散化したわれわれ。
ウェブ3.0は非集中化した私。
そして、インフォコモンズ(情報共有圏)の必要条件は次の4点。

暗黙ウェブである。
信頼関係に基づいた情報アクセスである。
情報共有圏が可視化されている。
情報アクセスの非対称性を取り込んでいる。
Amazonの協調フィルタリングでは、この本を買った人はあの本も買っていますと勧められるが、誰が買ったかという点は可視化されていない。しかしWeb3.0では誰が買ったかということがわかるため、自分と感性が近いこの人が買ったものならば安心して買えるといった信頼関係ができあがる。

本書を読むことにより、サイトの企画についてアイデアをもらえた。ありきたりの発想で旧来のウェブサイトを作るのではなく、独自の視点で次世代型のサイトを企画、構築したいと思わせてくれる内容であった。
著者は元新聞記者であるようで、論理構成もしっかりしており、IT業界の人にはぜひ読んでもらいたい1冊である。

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2008/08/03

雲を掴め 富士通・IBM秘密交渉

IBMと富士通の間でかつて紛争があったことは知っていたが、具体的な内容は知らなかった。
この本で詳細を知り、ほんの20数年前にこんなことがあったのかと驚いた。

あとがきで著者はつぎのように書いている。

この小説はリアルに描いてはいるが、すべてが創作で、フィクションである。筋書き、登場人物、登場人物の会話など、すべてが作り物である。
しかし中には事実と一致する部分もある。なぜならそれは、1997年4月30日のIBM-富士通との間で「事件」の終結合意書が調印され、守秘義務は消滅し、関係者が事実を語ることがゆるされたからである。
フィクションであると書いてはいるが、著者は当時富士通で実際に交渉に当たった人物であるらしい。したがってほぼ実話でないかと想像する。

日米貿易摩擦など時代背景はあったのであろうが、おとり捜査までして日立や三菱電機の社員をアメリカで逮捕するのか。すごいなぁアメリカとIBM。
本書は最初の8か月の交渉部分のみであるが、訴訟でそのあと10年以上最終決定までにかかったようだ。
交渉の結果に関してはどちらに有利であったかの判断は難しいが、非常にシビアなものであったことは文章から伝わってくる。

今もIT産業はアメリカ主導であるが、当時はもっとアメリカ(IBM)が主導権を握っていたと想像する。きっとこの頃の頑張りがあったからこそ現在のく日本のコンピュータメーカーがあるのだろう。

まあ、時は流れいまや汎用機はコンピュータの主役ではなく、UNIXとパーソナルコンピュータに移ってしまったが。

交渉の中身よりも、過去にこういう紛争があったということが新鮮な気がした。

あとがきで著者が書いているが、現役の官僚とビジネスマン、高度経済成長を担ってきた団塊世代の官僚とビジネスマンに読んでもらいたい1冊である。

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2008/08/02

リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間

リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なことに続き、リッツ・カールトンに関する本を読んだ。

今回は日本にリッツ・カールトンができる前からアメリカのリッツ・カールトンで働き、大阪や東京での開業に携わった高野氏が著者。

リッツ・カールトンの考え方はある程度わかっているつもりだったが、本作でも参考になることが多数あった。

なぜお客様に行き届いたサービスができるのかという点について。リッツカールトンではスタッフの誕生日や入社記念日を祝うというシステムができているおり、たとえば入社8年目の従業員がいれば、8の字にくりぬいたクッキーや8という数字の入ったオブジェをプレゼントするらしい。
ふだんから祝うということを定着させているため感性が磨かれ、お客様に対して行き届いたサービスにつながる。

企業によっては部署が違えば別会社のように関わりが希薄であったり、場合によっては敵対したりすることもある。しかしリッツカールトンではそうならないための仕組みがある。
まず、クレドで従業員の考え方が統一されている。

リッツ・カールトンではクレドはマニュアルであるという捉え方は決してしません。マニュアルというのは毎日の企業活動の中で、たとえば危機管理、衛生管理、効率化など、誰が携わっても一定の結果を実現させるうえで不可欠な指南書であり、また物差しであると言えます。それに対して、クレドは「感性の羅針盤」のようなものです。現場で問題に直面したときや、お客様のさまざまなライフステージに立ち会うときなどに、その従業員の行動指針がクレドカードを読み解くことによって示されるのです。さらにその感性を全従業員が共有することで、ぶれない方向性が保たれます。
そして、「ファーストクラス・カード」を利用し、他部署のメンバーに助けてもらったときには感謝の意を現わすとともに、人事査定にも利用して積極的な連携を促している。

また、リーダークラスの意識もすばらしい。

このとき、どのチーフも必ず次のように力説します。
「私たちのセクションの仕事の役割はこんな内容です。でも、私たちの目的はみんなと一緒です」
つまり、それぞれに与えられた役割は違うけど、それはリッツ・カールトンのひとつのビジョンやミッションのもとに行われていて、みんな目的は一緒なのだということを伝えているのです。
新入社員は地味で単純な仕事をさせられるものであり、場合によっては見切りをつけてすぐに辞められてしまうケースもあるのだが、リッツカールトンではそのならないように意識している。

まず初めに、地味な現場の仕事の大切さ、それらの仕事が会社のビジョン達成のためにどういう意味合いがあるのか、それを明確に納得できるように伝えるということです。企業が犯す最大の罪は、従業員にビジョンなき仕事をさせることだ、とはリッツ・カールトンの創立者、ホルスト・シュルツィの言葉です。
次に、社員の感性の高さや向上心などを見抜き、それを伸ばしていく職場環境を全社的に整えること。ビジョンなき単純作業を10年重ねてチーフになった人は、次の世代に対しても同じことをするものです。
さらには、リッツカールトンは採用の段階で自社の文化に適応できるか独特の方法でチェックしていることに驚かされた。
面接会場は大宴会場。入口にはドアマンが2人立って応募者を出迎え。そして場合によってはプロのミュージシャンがピアノ演奏までしたなかでの面接。管理職がウェイターとしてコーヒーやジュースを運ぶ。

入社試験のためにいったいどうしてここまでやるのか。もともとリッツ・カールトンには相手がだれであろうと「親切なおもてなし」をする文化がありますが、理由はそれだけではありません。
もうひとつの理由は、他の応募者の反応を見て気付きました。350人の募集に対して約3000人の応募があったのですが、会場の雰囲気を見た半分くらいの人が、
「自分には合わない。もっと普通のホテルで働いたほうが気が楽だ」
と言って帰ってしまったのです。
応募者にもお客様と同じようなおもてなしをするのは、じつは最初にリッツ・カールトンの理念や価値観を伝えるためです。
実際に自分が受けたサービスを通して、リッツ・カールトンの文化に適応できるのか、もしくは本当に適応したいのかを考えてもらう狙いがあったのです。面接試験は、いわばお見合いのようなもの。お互いの価値観を最初にしっかり披露しあい、感性が合えば結婚すればいいのです。
本書は、経営者だけでなくすべてのビジネスマンにお薦めする1冊だ。

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