読書感想文

新刊、休刊、文学、専門書。
あらゆるジャンルの書籍について読書感想を書いていきます。
得意分野: IT関連技術書、ミステリー小説、ベースボール


2008/11/30

恐慌前夜

副島隆彦氏の著作は初めて読んだのだが、非常に良かった。
というのも、巷ではややもするとサブプライムローンに端を欲する金融不安はもう解決に近づいているという風潮もある中で、本書はまだまだこれからひどくなるということを根拠を示しながら教えてくれる。
本書を読んでいなければ、金融危機を楽観的にとらえて一気に勝負しようかという勢いだった。兜の緒を締めさせてもらったという意味で非常に価値のある書籍だった。

ちなみに、本書で書かれている内容はリーマンの破たんなど大筋正しいように見えるが、現時点で2つ当たっていないものがある。ひとつはオーストラリアドルが安くなっている点、もう1つが巻末に書かれている恐慌の時代に強い銘柄として描かれていた新井組が民事再生法を申請したこと。

この「海外の中央銀行や金融機関が保有している」160兆円(1.5兆ドル)の内訳はおそらく次のとおりだろう。
 中国が40兆円。日本が23兆円(本当はこの倍ぐらいの額があるのではないか)。サウジアラビアが30兆円だろう。さらにイギリスは10兆円で、これでゴードン・ブラウン首相が真っ青である。前述したとおりイギリスは、もう大恐慌(ディプレッション)突入だと大騒ぎしているのである。
 フランスとドイツもそれぞれ10兆円ぐらいだろう。

この諸外国が保有する160兆円の内訳では、さらに中東のUAE(アラブ首長国連邦。アブダビをはじめ7つの首長国からなる)で合計5兆円。オーストラリアが1兆円であろう。おそらくイタリアとロシアは0円である。この2カ国はアメリカなんかには騙されないのである。大したものである。
160兆円もあれば当分アメリカは復活できないし、著者によるとこれらの金額は他国には1円も戻ってこないらしいので、他国もかなり影響を受ける。

オバマは、大統領2年目の2010年ごろには米ドルの切り下げ宣言を行うだろう。もっと早まるかもしれない。それは1971年8月15日の「ニクソン・ショック(ドル・ショック)」と同じようなものとなる。

この分だと円高ドル安はまだまだ続きそうだな。。。

この金の値段が、やがて今の2倍、3倍になってもまったくおかしくはない。だから私が繰り返し書いてきたとおり、実物資産の王者である金は、今からもっともっと高騰する。金1グラムは1万円になる。それには5年ぐらいしかかからないだろう。

8月時点で、金地金は1オンス810ドルぐらいまで値下がりしている(一時は800ドルを下回った)。1000ドルを付けたのが嘘のようだ。だが、金は来年はやがてふたたび今年3月に記録した1000ドルを超してゆく。そして、2~3年かけて1オンス(31グラム)2500ドルまで上げていくだろう。
76~77ページに掲げた金価格のグラフを参考にしてほしい。日本国内での金価格は、値下がりして1グラムが2900円(小売りの値段ではなくて工業品取引所の価格=中値である)ぐらいになっている。7月には3300円台まで上げていたのだが、8月に入って下げ足を速めている。しかし、それでも金の国際価格が1オンス900ドル台から810ドルに下げたのに較べて、国内価格は非常に落ち着いている。それは為替が円安に動いていたためである。1ドル=109年で計算すると、約2900円になってしまう。1オンス850ドルを31(グラム)で割って、それに109(円)を掛ければいいのである。
 これが円高(ドル安)に転じると、1グラム3000円を大きく割り込むことが予想される。そうなったら本当に金の買い場であると私は思う。

一時期よりも下がってきた金の値段(現在東京金は2500円)。10年前は1000円であったことを考えると、そのあたりまで下がれば確実に買いということか。


これからはオーストラリア・ドルとカナダ・ドルが強い。とりわけオーストラリア・ドルがもっともっと強くなるだろう。昨年の3月5日には1オーストラリア・ドル=89円だった。ところが今年7月22日には104円を記録している。その後100円台を割ったものの、長期的に見れば強くなっていくだろう。オーストラリアはウランや鉄鉱石その他の非鉄金属が出る資源大国である。政治も安定しており、これから先、日本人の資産家が資金を逃がす(移す)ならばオーストラリアであろう。本気で考えたほうがいいと思う。

現在1オーストラリアドルは62円。これに関しては著者の予想ははずれているなぁ..

それから今後、中国に何百基も原発を作って輸出するであろう東芝、日立、IHI(実質的にはこの3社はGEの子会社トリオである)にも注目すべきだ。
この3社は注目に値するなぁ。特にIHIは現在株価100円程度だが、ここを耐えれば景気が良くなったときにどれぐらい上がるだろうか。

もっとはっきり書こう。巨大銀行のシティグループ(シティバンク)はあと3年で潰れる。証券会社最大手のメリルリンチも、リーマン・ブラザーズもモルガン・スタンレーも来年、再来年までには消えてなくなる。生き残るのはゴールドマン・サックスとJPモルガン・チェースとウェルズ・ファーゴ銀行などであろう。バンク・オブ・アメリカはかろうじて生き残るだろう。クレジット・カード大手で言えば、VISAとアメックス、ダイナース、マスターカードの大手4社は生き残るだろうが、それ以外は危ないものである。
たしかにリーマン・ブラザーズは破たんした。そしてシティは株価が急落し結局政府が救済措置を行うことによって生き延びた。メリルリンチはバンクオブアメリカに買収された。
ここまでは著者の指摘通りにすすんでいる。あのシティがこんなにひどい状況であるというのはテレビの経済評論家からは聞いたことがない。この本を読んでいなければシティは安全と思っていた。
もっと恐ろしいことをここで予言しておこう。それでも10年以内の近い将来、おそらく中東で核兵器が1発か2発、破裂するだろう。この事態はある意味では避けられないものだ。人類というのはそれぐらい愚かな生き物である。そしてサウジアラビアで、今のサウド王家の打倒を目的とするイスラム原理主義革命が勃発するだろう。その時には原油は1バレル250ドルを突破するだろう。それがこれからの世界の冷酷な動きである。
これは驚きだ。 著者にはいろんなコネクションがあり極秘情報が入ってくるのであろうが、核兵器か。。。。

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覇王の番人

「ホワイトアウト」などで知られる真保裕一氏の時代小説。
真保氏の作品はすべて読んできているので今回も読んでみた。
上下巻あわせて800ページ。結構なボリュームだ。

明智光秀を主人公としたストーリー。明智光秀といえば本能寺の変で有名であるが、謀反を起こした理由は諸説あり謎が多い。その謎について、各種文献により史実を確認した上で明智光秀を生き生きと表現することにより描いている。
今までは明智光秀といえば悪役のイメージであったのだが、本作品ではそうはなっておらず真保氏の解釈がおもしろい。

昔の言葉などを使用しており、最初の100ページほどはなかなかのめりこめなかったのだが、そこから先は一気に惹きこまれていった。本作は、真保氏の代表作品になるであろう。

歴史好きの人にはぜひともお薦めしたい1冊。

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2008/11/15

なぜ投資のプロはサルに負けるのか?

著者は金融日記の藤沢数希氏。

金融工学のプロが株式について語っているのだが、非常におもしろかった。
特に競馬や宝くじがどれだけぼったくりであるかの説明は秀逸である。期待リターンが低いことは理解していたが、実際の数字をつかって説明してもらうと非常にわかりやすかった。
後半では経済学者の論文を解説しているのだが、他の本でも書いてありそうな内容なのでちょっとインパクトが弱かった。
株式は平均すると年利5%なので競馬や宝くじと違って勝てる確率が高いような前提になっているが、ここ10年ほどをみると年利5%もあるのか?という気がした。

はっきりいうと、投資と投機に区別なんてありません。
というか、区別してもしなくても、どっちでもいいのです。
このあたりも自分の感覚と似ていて非常に好き。ビジネスで事業を起こすための先行投資も自分の感覚ではギャンブル。株式投資もギャンブル。何をするのも全部ギャンブル。

結局、「販売手数料と信託報酬、その他のコストがなるべく安いインデックス・ファンドを買って、後は投資したことなど忘れて、自分の本業に打ち込んでお金をがんばって稼ぐのが一番」というのが、ここまでファイナンス理論を勉強してたどりついた結論です。
結局、株価を研究する時間とリターンを考えると、まんべんなく分散投資しておくのが一番よいってことか。。

まず、株式市場への投資は便利なインデックス・ファンドが利用可能なので、それらを利用しましょう。日本株へ投資したい場合はTOPIX、外国株に投資したい場合はMSCI-Kokusaiに連動するインデックス・ファンドを利用します。
そして、日本株と外国株の比率ですが、現代ポートフォリオ理論に従い日本株と外国株の時価総額の比率で組み合わせるのがいいでしょう。TOPIX対MSCI-Kokusaiを15対85ぐらいにしておけば大丈夫でしょう。
15対85はちょっと外国株にかたよりすぎの気もするが、それだけ日本が安心できないってことか。。

僕は個人的には、外国株、日本株、外国国際、日本国債を85対15対50対0にアセット・アロケーションしています。
日本国債0ってやっぱり日本を信用していないのか。。。

株式投資をするひとにはぜひとも読んでもらいたい1冊。

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2008/11/11

XBRLの衝撃

金融庁と東京証券取引所が採用しているXBRL。
これを理解すれば機械的に上場企業の財務分析が可能になり、株価分析システムが作れるのではないかと思って読んだ。

本書ではXBRLの概要や導入事例、今後の展望が豊富な図表つきで非常にわかりやすく解説されている。XBRLの概要を知りたい人にとっては非常によい本である。
一方具体的にXBRLを利用した分析プログラムを書こうと思っている技術者にとっては、専門的な解説が足りず満足できないだろう。

ちなみに、XBRL形式の財務情報は次のサイトからダウンロードできる。

EDINET

TDNET

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2008/11/09

転職は1億円損をする

タイトルに魅かれて読んだが、1億円の算出方法がお粗末すぎる....
退職金、厚生年金、住宅補助、交通費補助の制度のある会社からそれらがまったくない会社への転職という極端な例も問題だが、それらの計算方法もところどころ間違っている。
例えば、健康保険組合に加入していても現在は3割自己負担であるが、本書の計算では2割負担になっている。また、年金や組合健保の保険料については給料から天引きされるのだが、本書では転職前の計算でそれが考慮されず、転職後の国民年金・国民健康保険だけ支払い分を計算している。
どうも著者はこのあたりの制度を理解していないのではと疑わざるを得ない。
タイトルにしているのだから、少なくとも計算式に間違いがないか社労士あたりに裏をとってから出版してもらいたかった。今からでもよいので間違いを訂正し、計算しなおした結果をWebに掲載してもらいたい。
まぁ、転職先の条件をもうちょっとリアリティのあるものにしてもらえればもっとうれしいが。。
たとえば転職して年収が100万円上がったとしても、退職金や年金まで考えた場合には得か損かというのをもうちょっとリアリティのある例をだして知りたかった。もちろん会社によって制度が異なるし未来のことはわからないというのは当然の話であるが、少なくとも実在の人物の転職例で現時点でのシミュレーションをしてもらえると非常に参考になったと思う。
例. 新卒で電機メーカーA社に入社したZ君が、10年後に競合のB社に年収100万円増の条件で転職。仮にA社で働き続けてたとしてもB社でのポストと同じまで昇進する(例えば部長)として、転職ありの場合と無しの場合で生涯賃金を比較。A社、B社ともに実在の会社なので各年齢・ポストでの年収は推測できる。各社の現時点での制度に基づき生涯賃金をシミュレーション。
こうすれば転職した場合退職金や年金がどれぐらい不利か一目瞭然になると思うのだが。。

4章以降の分析に関しては納得する部分のあったので、1億円の算定方法が残念だ。

ちなみに私は、転職賛成派なので、城繁幸氏の著作「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか」、「若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来」の方が納得して読めた。

もちろん、目的のない転職には賛成できないが。

ヘッドハンターが書いた著書も参考になるだろう。
35歳までに年収2000万円になる

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2008/11/01

テイクダウン

若き日本人科学者が超有名クラッカー ケビンミトニックを追跡し逮捕にいたるまでのドキュメンタリー。
若き日本人科学者というのは、2008年にノーベル化学賞を受賞した下村脩氏の息子の下村努氏。

下村努氏自ら書いたドキュメンタリーであるが、小説よりもよっぽど面白い。というのも、事実に基づいているだけに、ミトニックの手口が非常にリアリティがあり、追跡過程も矛盾点がないのだ。安っぽいミステリー小説にありがちなつっこみどころが存在せず、納得しながら読めた。
しかも単に技術的な話に終始せず、恋愛的要素も入っている。だから小説よりもおもしろい。
ただしどうしてもコンピュータや電話に関する技術的な話が多いので、そのあたりの知識がない人には逆にちんぷんかんぷんになって面白くない可能性はある。

この本が書かれたのは1995年。まだ日本ではインターネットが一般家庭では利用できない時期であったが、すでにそのころから本格的なクラッキングが行われ、不正侵入や情報漏えいが行われていたことには興味がある。まぁIPスプーフィング、.rhosts、sendmailのバグといったところがメインの侵入手段であり、現在では技術的・思想的に改善されてきてはいるのだが。

現在でもインターネットの世界では、クラッキングが行われている。
仕事でインターネットに関わっている技術者には、ぜひとも読んでもらいたい1冊である。

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